Rule Space Method を用いた教育支援システムに関する研究開発動向について 研究開発部 試験方法研究部門 林 篤裕 試験を行なうことによって、その時点での受験者の学力特性を把握すること ができる。しかし、受験者の行動としては、ややもすると得点と言う「数値の 大小」に関心が集中してしまい、次の学習ステップとして、どの単元を習得す るのが「より効果的」なのかと言ったところに、興味を持たれない場合が多い。 これは、採点結果が数値でしか受験者にフィードバックされないことも一因で あり、得点に加えて的確な助言(アドバイス)を添付することによってかなり改 善される事が予想される。しかし、大規模な集団に対してこのようなきめ細か い指導を実施することは現状では不可能であり、何らかの方策を立ててシステ マティックに助言を与える手段を講じる必要がある。 試験結果から受験者を学習進度に基づいてクラスタリングする手法として、 近年 Rule Space Method が注目されている。この手法は、教育評価の領域か ら提案されてきた手法で、試験内の個々の問題(Item)とそれらを構成する最小 の単元セット(Attribute)の関係を用いて、Item の解答パターンから学習進度 の似ている受験者を一つのクラスター(Knowledge State)に分類することを可 能にする。科目の担当教員による「問題分析」を通して得られる Item と Attribute の関係により試験問題の構造を詳細に明らかにすることができ、こ れは当該科目の達成の度合いを測る基礎資料ともなる。 今回は、階層的ニューラルネットワークモデルにおける中間層の役割と Rule Space Method における Knowledge State の意味合いに注目し、両者の 差異について数値的に検証を試みた。具体的には、 1) 階層的ニューラルネットワークモデルを用いて Item-Attribute Matrix を 再構成させた。 2) データを Training Set と Validity Set の2群に分けて、階層的ニューラ ルネットワークモデルにおける推定値の安定性を評価した。 3)階層的ニューラルネットワークモデルの中間層と Knowledge State の関係 を詳細に検討し、その結果、数値的な性質として両者は異なるものであること が判った。 今回の研究を通して、両者には相互を補完する機能を備えていることも判っ てきているので、今後これらの研究結果を踏まえて、特にRule Space Method の利用にとって重要な位置を占めるAttribute の探索に階層的ニューラルネッ トワークモデルを応用することを検討する予定である。 なお、今回の研究成果については、2000年5月11〜14日に Banff(Canada) で 開催されたICMMA(International Conference on Measurement and Multivariate Analysis) において "A Comparison of Rule-space Method and Neural Network Model for Classifing Individials" というタイトルで発表 し、同じテーマを持つ研究者と意見交換を行った。