08/03/10 旺文社 蛍雪時代 9月臨時増刊号『全国大学推薦・AO入試年鑑』 掲載文 AO: 九州大学 『評価の中心は言語運用能力。 正確な理解・思考・表現を観る』 高等教育開発推進センター 教授 林 篤裕 *新キャンパス完成で未来を拓く 九州大学は日本で4番目の帝国大学として設立 され、来年100周年を迎えます。現在は11学部と 21世紀プログラム、それに18学府、4専門職大学院、 17研究院、3附置研究所、大学病院などから構成 されています。学生約19000名(うち留学生約1700 名)、教職員7000名が在籍する日本でも有数の総 合大学で、卒業生は各界で幅広く活躍しています。 キャンパスは福岡都市圏に、箱崎、病院、筑紫、 大橋の4地区があり、加えて西区に伊都地区が誕 生し、06年秋に第一陣である工学系が、09年春に は教養教育を担っている全学教育施設が移転しま した。今後、箱崎地区の機能が順次移転する予定 で、21世紀型の教育の場として、また、未来を拓 く研究の実証実験の場として、さらに地域と連携 した学術研究都市の核として期待されています。 *認知領域と情意領域の力を 2000年に国立大学として最初にAO入試を導入 した3大学の1つである九州大学は、2011年度入 試では、教育・理・医(保健学科)・歯・薬・芸術工・ 農学部、および21世紀プログラムの合計197名(全 定員の7.7%)をAO入試で募集します。国立大学 のAO入試全般にいえることですが、AO入試で は専門領域に対する意欲や関心を評価対象とする ことはもちろん、基礎的な学力にも重点を置いて 選抜を行い、一般入試とは異なる特性を持った学 生を入学させる手段として有効に機能していま す。実際AO入試で入学した学生は、卒論の取り 組みに意欲的であるといった報告もあります。 学部・学科によって選抜方法は異なりますが、 問題発見能力、論理的思考力、論理的表現力、理 解力、応用力などの「認知領域」での能力と、学習 意欲、好奇心、探究力、責任感、誠実性、協調性 などの「情意領域」での能力とを総合的に評価する ことに主眼を置いていることは共通しています。 *やりたいことを実現するために AO入試を受験するに際して、特別な勉強法や 対策は必要ありません。大学が高校生に求める第 一の条件は、高校の教科・科目をなるべく広く、 かつ万遍なく勉強してくることだからです。その 上で、言語運用能力に長けた学生を求めています。 大学入学後は、他の学生や教員といろいろな話題 で意見交換を行う場に遭遇します。その際に、自 分の主張を誤解なく相手に伝え、相手の発言を正 確に理解し、また、自分の考えとどのように異な るかを明確にする必要があります。そして最終的 にはそれらの行動を通して生産的な提案を行える 能力が求められます。 これらのベースとなるスキルは、平たく言えば 国語とか日本語(日本人の場合)といわれるもので すが、個人ごとの微細な違いを敏感に感じ取り発 信する能力は、高校生活における友達や先生、保 護者との濃密な会話を通して養われるように思い ます。面接試験では、与えられた問題に対して、 正確に理解して思考し表現できるかを観るものも 多く、言語運用能力を観ているともいえます。 大学は主体的に提言・行動する学生を求めてい ます。自分のやりたいことを見つけ、どうすれば それが実現できるかを考えて大学に入学してきて ください。来春、皆さんとキャンパスでお会いで きることを楽しみにしています。