07/27/10 旺文社 蛍雪時代 9月臨時増刊号『全国大学推薦・AO入試年鑑』 掲載文(提出文) *言語運用能力の大切さ 九州大学 高等教育開発推進センター 教授 林 篤裕 *歴史ある屈指の総合大学: 概要 九州大学は、1911年に日本で4番目の帝国大学として設立され、来年100周年を迎えま す。現在は11学部(文学、教育学、法学、経済学、理学、医学、歯学、薬学、工学、芸 術工学、農学)と21世紀プログラム、それに18学府(大学院・教育組織)、4専門職大学 院、17研究院(大学院・研究組織)、3附置研究所、大学病院などから構成されていま す。学生約19000名(留学生約1700名を含む)、教職員7000名が在籍する日本でも有数の 総合大学で、卒業生は各界で幅広く活躍しています。 キャンパスは、福岡都市圏を中心に、箱崎地区、病院地区、筑紫地区、大橋地区に所 在しており、それに加えて福岡市西区に伊都地区が誕生し、06年10月に第一陣である工 学系が、09年4月には教養教育を担っている全学教育施設等の移転が完了しました。今 後、このキャンパスへは箱崎地区の機能が順次移転する予定で、21世紀型の教育の場と して、また、未来を拓く研究の実証実験の場として、さらに地域と連携した学術研究都 市の核として期待されています。 *九州大学のAO入試 2000年に国立大学として最初にAO入試を導入した3大学の一つである九州大学は、平 成23年度入試では、教育・理・医(保健学科)・歯・薬・芸術工・農学部、および21世紀 プログラムの合計197名(全定員の7.7%)をAO入試で募集します。国立大学のAO入試全般 に言えることですが、AO入試では専門領域に対する意欲や関心を評価対象とすることは 勿論のこと、基礎的な学力にも重点を置いて選抜を行っており、一般入試とは異なる特 性を持った学生を入学させる手段として有効に機能しています。実際AO入試を経て入学 してきた学生は、卒論の取り組みに意欲的であるといった報告等もあります。 学部・学科によってその選抜方法は異なりますが、問題発見能力、論理的思考力、論 理的表現力、理解力、応用力などの「認知領域」での能力と、学習意欲、好奇心、探究 力、責任感、誠実性、協調性などの「情意領域」での能力とを総合的に評価することに 主眼を置いていることは共通しています。詳細については「学生募集要項」をご覧いた だくと共に、問題集等で事前に目を通しておくと良いでしょう。 *AO入試を目指される皆さんへ AO入試を受験するに際して、特別な勉強法や対策は必要ありません。大学が高校生に 求める第一の条件は、高校の教科・科目をなるべく広く、かつ万遍なく勉強してくるこ とだからです。その上で、言語運用能力に長けた学生を求めています。大学入学後は、 他の学生や教員といろいろな話題で意見交換を行う場に遭遇します。その際に、自分の 主張を誤解なく相手に伝え、相手の発言を正確に理解し、また、自分の考えとどの様に 異なるかを明確にする必要があります。そして最終的にはそれらの行動を通して生産的 な提案を行える能力が求められます。これらのベースとなるスキルは、平たく言えば国 語とか日本語(日本人の場合)と言われるものですが、個人ごとの微細な違いを敏感に感 じ取り発信する能力は、高校生活における友達や先生、保護者との濃密な会話を通して 養われるように思います。AO入試の面接試験では、与えられた問題に対して、正確に理 解して思考し表現できるかを観るものも多く、言語運用能力を観ているとも言えるで しょう。 大学は主体的に提言・行動する学生を求めています。自分のやりたいことを見つけ、 どうすればそれが実現できるかを考えて大学に入学してきて下さい。来春、皆さんと キャンパスでお会いできることを楽しみにしています。