情報交差点 大学入試センター 林 篤裕 梅雨明けが待ち遠しいと感じていたある日、西川浩昭会報担当理事から巻頭言の執筆 依頼を受けた。以前に一度お断りをしていた経緯もあり、不義理を続けることも苦しく なって今回はお引き受けすることにした。しかし、どう頭をひねってもうまい題材が見 つからない。ヒントを探すべく、書架にある学会誌や大会予稿集を引っ張り出してペラ ペラとめくってみた。 それまで統計関連の学会を主に参加していた私は、就職2年目に本学会に入会した。 詳細な記憶はないが、その年(1987年)の第15回大会が九州大学主幹(大会実行委員長: 浅野長一郎先生)で開催されることから、入会を勧められてのことであったようにも思 う。この大会では「統計パッケージ再考」と題する特別セッションが組まれており、そ の中で発表させてもらい、当時まだ発展途上であったソフトウェア環境の将来について あれこれと議論をした。 その翌々年の第17回大会は岡山大学主幹(同: 脇本和昌先生)で開催された。この大会 では、数理的理論のセッション以外にも、動物学や感覚、言語学を取り扱う特別セッ ションも組まれていて、行動計量学にはいろいろな応用分野があることを改めて認識し た。夜には駒澤勉先生が先導しておられた私的懇親会に紛れ込んで、そのセッションで 講演された方々と挨拶をし、新鮮な気持ちでいろいろなお話をさせてもらったことを今 でも覚えている。 また、聖学院大学主幹(同: 丸山久美子先生)の第34回大会(2006年)では、プログラム 委員会の一員として微力ながらお手伝いをさせてもらった。 手元にある14冊の予稿集を見るとき、年が進むにつれて自分の研究テーマが変遷して 行くと共に、注目されているテーマも変化し、また、存じ上げている方々の研究テーマ や所属も少しずつ変化しているのが判る。入会した頃に中堅であった先生方も、もう定 年を迎えられたり、残念ながらお亡くなりになってしまわれた先生もいらっしゃる。 加えて、大会開催時には気にも留めていなかった研究テーマが、こうして見返してみ ると既にその頃から存在していたことに気付かされたりもした。所属機関の性格もあ り、現在は「入試研究」を一つのテーマとしているが、本学会では古くから特別セッ ションも組まれ、いろいろな議論が交わされてきたことも改めて判った。決して懐古趣 味ではないが、学会誌や大会予稿集を大事に保存しておき、たまには引っ張り出して見 るのも良い刺激になるのではないかとも感じた。 本学会は医学やQOL、官能検査と言った様々な分野の計量から、心理学や統計学の理 論展開、調査法まで幅広いテーマが取り扱われている。そして、今後も先端的なテーマ が登場してくることであろう。これからも行動計量を軸にいろいろな分野の話題が行き 交う「情報交差点」のような学会であることを願っている。 (はやし あつひろ、大学入試センター 日本行動計量学会理事)