AirBus Impression 96.11.30 版 =============================== 11月下旬に札幌で学会があり、その行き帰りに JAS の AirBus A300 に乗る 機会があった。その際、コクピット訪問をお願いしたところどちらにもお招き いただけたので、その時の感想をまとめておく。 JAS111 (羽田==>新千歳) AirBus A300/B2 11/27 --------------------------------------------- あまり天候が良くなかったので、コクピット訪問を依頼しても無理かなとも 思ったが、シート(9B)に着座時に ステュワーデスさん(CA)にお願いしてみた。 すると、この便にはコクピットに移動のために搭乗しているクルー(デッドヘッ ドクルー)が入っているので無理かもしれないと言われてしまった。無理なら あきらめますと付け加えて一応お願いしておいた。ドアクローズ時に同便に乗っ ていた I 氏の横に移動(7B)し(この便は空いていた)移動したことを伝えてお いた。予想通り離陸時にはある程度揺れたのでサービスも遅めになり、やはり 無理だったかなと思っていたが、自分にサービスが廻ってくる頃に「どうぞ」 とお誘いを受けた。山形を過ぎた辺りだったと思う。 前方のギャレーの左から 1/3 のところだけ 80cm ほど奥まっていて、その スペースの左側がトイレになっている。突当たりがコクピットへのドアがある。 CA さんが幾つか操作をした後、ノックをしてコクピットに入れてもらった。 AirBus は後発のメーカーなので、グラスコクピットだろうと期待していた がこの機体(A300/B2)は 3メンクルーの古いタイプのコクピットであった。左 席に機長(CAP)、右席に副操縦士(FO)、その後ろに航空機関士(FE)の席がある。 CAP の後ろに補助の席(ジャンプシート?)があり、この便にはデッドヘッドク ルーが座っていた。この4者の真中に位置すると天井に頭がつくぐらいなので、 ややかがみぎみにしないといけない。ジャンプシートに座らせてもらって、デッ ドヘッドの方に終始説明いただいた。古いタイプと言うことで MS-Flight Simulator のセスナの計器と基本的には同じ形状のものがならんでいる。各種 計器はセンサーが敏感なせいか、数値が細かく振動しているように見えて指示 されていた。 この機体は飛行の経過点を最大で9点ほど入れることができ、それを順にト レースしてフライトを行なうそうである。長いフライトの場合は、飛行中に通 過して使用の終った領域に次の経過点を入力していくことになるらしい。ちな みに今回のフライト(羽田==>新千歳)だと6点ほど使用するので、追加作業は必 要ないとのこと。入力情報は、全て緯度と経度を組にして入力し、ワンフライ トごとにクリアーされてしまう。また、各地点のデータベースは組み込まれて いないので、毎回入力しないといけないということであった。 スピード計の周囲にタブと呼ばれる目安を示す矢印があるのだが、V1、VR、 V2 の3つに使うものと思っていたら、5つほど付いていたので聞いたところ、 上空に上がってからの失速速度等を示す(正確には理解していないかも)ために もセットされているらしい。また、着陸時にも使うとのことで、事実、 Landing Check の中で、タブを移動させていた。 いろいろと話していたところ、VOR の指示針がクルリンと反転した。三沢の VOR をヒット(上空通過)したからだ。Flight Simulator では体験したことが あるが、本物も同様に動くのを見て少し感動した。 着陸時に滑走路までの距離の目安を示す標識(OM、MM、IM)の指示灯もきちっ と、青、オレンジ、白のランプが並んでいた。実際に通過するときには客室に 戻っていたので、本物は聞けなかったが、ツツツーという警告音も鳴るとのこ と。Simulator 通りや。 <=== 当たり前。 離陸、上昇時に揺れたことについて聞いてみたところ、水滴を検知するレー ダーである程度判断できるとのことであった。ただ、他にも温度変化の激しい ところ(異なった性質の気流が動いている)や先行機からの情報、天気図等も判 断して経路上の揺れの情報を収集しているとのことであった。 スロットルレバーの後部に灰色のノブ類がまとまっていたので聞いたところ トリムのためのものらしかった。でもほとんど触る必要はないとのこと。 CAP の左横に直径 15cm ほどのリング(ほぼ水平方向に回転する)がある。FO の右横にもあるのかは未確認。前輪のハンドルとのこと。使うのはタクシング 時だけで、離着陸時には使わない。着陸時のスピードが高いとき(60 〜70ノッ ト以上)には、ラダーの方が効くし、メインギアーもそれに追従するような構 造になっているとのこと。今思ったけど、着陸後、タクシーウエイに入るとき はどっちを使うのだろう? また今度の機会に聞いてみよう。 FE は外人の方であった。A300 の FE の 30 〜 40% 程度が外人だそうだ。 今はリタイアした ANA の L1011 も FE には外人が多かったようだが、FE の 乗務が少なってきている現在、彼らの職場も少なくなってきているのであろう か? ちなみに、天井に付いているスイッチのほとんどは FE が操作をすること になっているらしい。唯一、前方の一段奥まったところだけが、操縦士の操作 するスイッチだそうだ。また、天井に位置しているものはサーキットブレーカー で一つ一つは、8mm ほどの厚めのボタン状のものが並んでいるように見える。 ブレーカーが飛ぶと下に飛び出してくるそうだ。主に、不具合のあった機器等 を切り放すために使うだけで普通は操作の必要はないらしい。 いつも不思議に思っていた風向を知る方法だが、実際の飛行経路と流され方 等を判断材料に計算機が割り出しているとのことであった。以前は、地上の点 等を捕捉しながら計算していたらしい。 このフライトでは、どこも地上の天候が悪いらしく話をしている間中、窓の 下は雨雲ばかりであった。前回も感じたが、コクピットからの眺めは視界が広 く、主翼の先端までは優に見える。おそらく操縦席からはエンジン部分までを も見えているのかもしれない。 降下を開始するということで、席に戻るように言われたので、クルーの方々 に礼を述べてコクピットを後にした。津軽海峡の真ん中あたりの地点であろう か? フライトレベルは 33000 フィートであった。時間にして 20 分に近かっ たようにも思う。 今回は、デッドヘッドのクルーの方がおられたので、ほぼズーッと質問と回 答を繰り返すことができ、いろいろとお聞かせいただけた。思いつくまま体系 建てずに聞いたので、何を聞いたかすべては覚えていないが、思い出したもの として以上のようなものであったと思う。 JAS112 (新千歳==>羽田) AirBus A300-600R 11/30 ----------------------------------------------- 前回の便と違った機種なら訪問をお願いしようと時刻表を見たら、 A300-600R 型で来る時と異なることが判った。また、搭乗を待っていたところ、 目の前を二人のクルーが通ってコクピットに乗り込んだので、2メンクルーで あることも判ったので、訪問をお願いした。ただ、この便は出発が 10 分弱遅 れたし、お願いする時期も少し遅めになったので、訪問は無理かなと思った。 今回初めて身分証明書の提示を求められた。 嬉しいことに、水平飛行が始まった直後のまだサービスが始まる前の早い段 階でお招きを受けた。岩手にさしかかる上空あたりであろうか? コクピットの入り口の形状等は旧タイプと同じように思えたが、予想した通 りこの機体は 2メンクルーで CAP と FO だけの機種であった。FE がいない分、 面積も狭く、ジャンプシートがスロットルレバーの後ろにある。その席を引き 出してそこに座らせてもらって話が聞けた。今から思えば座った椅子の背面に もスイッチ類がぎっしりと並んでおり、あれらがサーキットブレーカーだった のかもしれない。 A300-600R 型は名古屋で墜落した飛行機と言う不名誉な知られ方をしている 機種である。まず最初に旧タイプと異なると感じるのは、計器類の少なさであ る。CAP と FO の前には、上下2段の CRT (一辺が20cm 弱の正方形)があり、 主に上段のものを使っているようであった。入室時には、水平儀に似た模様が 写し出されていたが、左辺にはスピード、右辺には高度と言ったように、総合 的な情報が提示されていた。この CRT の左右には見慣れた高度計等の機器も 小さめの計器で並んでいるが補助的に使うだけだそうだ。 上方に配置されたスイッチで指示することにより、各種の情報が CRT に写 し出される。この先の経路や周辺の飛行標識の位置関係、飛行場等。線が細か い上に微妙な変化も表示され(ドット数が大きい?)、また、夜間であったせい か、ディスプレイの美しさには感激した。 旧形に比べて計器数の少ない前面パネルの中央にはエンジン関係の計器も並 んでいる。これら全ての計器類は先日の計器に比べて数値の触れもなく落ち着 いた状態で指示していた。 ただ、3メンが 2メンになったことで、負担が増えたので、3メンの方が楽だ そうだ。事実、FO は客室のエアコンの調整まで行っていた(以前は FE の仕事)。 その分、旧形ではいちいち入力しないといけなかった経路は全てデータベース に入っているそうで、それらを指示してやれば緯度経度を入力せずとも自動的 に飛んで行けるとのこと。また、FO の左膝の横にチェックリストのカードが あるのだが、各ステージでのチェック項目も少なくなっているとのこと。また、 前述のスピードのタブも全て CRT の中に表示されるとのこと。 二人ともボタンで必要な情報を呼び出しては機体の状態を把握し、また、周 囲の航空機の監視に動き回っていた。同じ時刻に離陸した、羽田行きや名古屋 行きも確認できた。また、日本海側では天候が悪いらしく稲光も遠望できた。 風がきつく流され気味に飛行しているということで、機首の方向(Heading 214)と実際に進んでいる方向が異なっていた。あそこまで振られるというのは セスナのような低速の軽い機体ならともかく想像以上であった。事実先行機は 前方のやや左側(11時方向)に位置していたが、いつまで経ってもその関係は変 わらなかった。 スロットルレバーのずっと後方、自分の足の位置まで計器があるのだが、そ こにはプリンターも内蔵されていて、各種情報を出力させていた。多分、これ が ACARS と言うものであろう。羽田の天候や着陸滑走路の情報も出力されて いた。この右側にタッチパネル状の指示機が階層的に項目を指定してやって必 要情報を表示させているようであった。 入室したときから二人ともラジオをモニターしていて、どこかの空港が天候 で降りられなくなって代替空港(ダイバート)として千歳に向かっている便があ るとのこと。羽田も時おり雨が降っていて降下時には揺れが予想されていた。 名古屋の事故で問題になった、ゴーアラウンドレバーは意外と小さく、スロッ トルレバーの先端から下方に 3cm ほど下がったところに 5mm ほどの棒として 存在していた。FO の方は手が小さいせいか、そう簡単には引っ掛からないと 言っておられた。また、トリムの円盤(ホイールと言うのか?)もスロットルレ バーの両脇に配置されていた。速度が変化するとこのホイールも動くそうで、 水平飛行中に見学させてもらったときはほとんど動かなかった。むしろ、スロッ トルレバーが前後にゆっくりと、しかし頻繁に動いているのは判った。この近 所には Air Break や Flap 等のレバーも配置されていた。 また、FO の CRT の左には、上下に動くレバーがあり横に Up/Down と書か れている。質問したところ、ギアの出し入れレバーとのこと。その目的からす ればもっと大きなレバーかと思っていたが、確に、現在はレバーの力で出し入 れするわけでもないので、そのようなスイッチで十分なのであろう。 A300-600R 型のクルーは、A300 の古いタイプの機種の運行はできないそう で、それぞれで認可を受けないといけないらしい。ここまで計器が違うと別の 飛行機という扱いになるのであろう。新型は、各種スイッチで種々の情報を呼 び出しては確認しているという雰囲気で、スイッチの操作が多そうに感じた。 今回は予備のクルーも乗っていなかったので、ズーッと話し込むわけにもい かなかったが、その時その時の CAP と FO の操作を後ろで見せてもらえたの で、非常に楽しかった。このジャンプシートに座っているとノイズ(風切り音?) で両者の声が聞き取り難いが、両者の席同士では、会話に支障がないとのこと。 前回と同様に、降下を始めるということで、お礼を述べて退室した。大子町 (DAIGO)の上空あたりであった。今回は 仙台上空を経て 31000 フィートの水 平飛行中のほぼ全てを見せていただいたので、30分以上滞在していたように思 う。 今回は、ラッキーなことに、違った機種に乗れ、しかも両方とものコクピッ トを見せていただけたので、非常にうれしかった。これだけ訪問の機会がある と判っているのならば、後々のためにレジナンバーを控えておく方が良いのか もしれない。現在のところ、Boing 747-200(ハワイ線)と今回の計3機種を見せ てもらったことになる。 大学入試センターのマシンにはまだ MS-Flight Simulator をインストール していない(HDD を入れ替えればある)のだが、久々に、パソコンで飛びたくなっ た週末であった。