当初の電子メールはメールサーバーの管理とセットで運用されていることが多く、 複数のメールアドレスを保持できるのは、管理者の特権と言える部分もあったが、 有用性が認識されるに従って、電子メールアドレスを無料で確保できる サービスも出現し、20世紀末期に出現した AOLやHotmail、Yahoo! がその嚆矢であったように思う。 後発組と言えるGoogle社のGmailは2004年にサービスを開始し、 今や世界中を席巻している。 当初いぶかしがっていた私もこのGmailの自由さ、柔軟性に魅力を感じ 現在では大いに利用させていただいている。 その利用方法は人によって様々であろうが、複数のGmailアドレスを 工夫して使っている人も少なくないであろう。 Gmailの魅力は何と言ってもその抜きん出た検索力にあるように思う。 受信した電子メールの中から指定した文字列を含むものを 即座に提示してくれ大いに重宝している。 SPAMの判定も適切で、溜め込める容量も大きく、これらサービスが全て無料で 利用できることも驚異的である。
私個人の経験を振り返れば、 1993年には電子メールを使っていた記憶がある。当時は Sun というワークステーション上に自分で電子メールアドレスを作成し、 システム内蔵のメールプログラムを使って読み書きをしていた。 それ以前はパソコン通信(PC-VAN, Nifty Serve等)と称されるネットワークで連絡を 取ったり、掲示板を運用していたりしていた。 離れた場所の知人に一瞬で連絡が取れることが不思議であり有用でもあった。 メールサーバーが有機的にリンクしていて、個々人が発した電子メールが バケツリレー式にメールサーバー間を移動し、最終的に目的の相手に届けられるという 仕組みは面白いとも感じた。
時は流れ、現在では電子メールでのやり取りが普通になり、連絡を取り合う道具として 必須の道具立てに成長しインフラの一翼を担っていることは疑いのない事実であろう。 実際、サーバートラブル等で電子メールが届かない事態に陥ると、 変に不安を感じるようにもなってしまった。
しかし、3G 回線の終了と共に、PHS のサービスも終焉を迎え、
否応なく4G回線への移行を求められた。多くの人はスマートフォン(スマホ)に
移行したようだが、スマホは画面が大きく読み易くなることは利点と思うが、
ポケットに入るサイズではなく、常時携えておくには不向きである。
加えてバッテリーの持ちもさほど良くない。
仕方がないので、通話と電子メールの閲覧の機能は分離することにし、
前者の目的には PHS 時と同様のストレート形状のケータイ(セイコー製 Simply)
を持つことにした。
とは言え、筐体は胸ポケットには収まるものの、PHS より一回り以上大きく・重くなり、
しかもバッテリー消費もPHS と比較すると激しい。OS が Android なので、技術的には
電子メールのやり取りも可能ではあるのだが、そのためには追加料金も発生する。
通話が第一目的ということと、閲覧のためだけに追加料金を払うことには
納得が行かなかった。ということで、電子メールの閲覧にはケータイの利用を諦め、
スマホ上のGmail アプリを利用することにした。
ということで、私の生活において、電子メールはPC から送信し、 スマホで閲覧するというスタイルとなっている。
この状況は少なくとも2つの点で困った事態を引き起こしていると感じている。 1つ目は受信拒否となった電子メールが存在したことを、Gmail利用者には 通知されないため、このような事象が発生していることを認識できないことである。 多くの電子メールは問題なく受信できていることから、 トラブルなく運用できているものと思い込んでしまい、対策を立てようという 動機付けが起きない。2つ目は不達メールに表示される送信元メールアドレスが Gmailのものとなっていることである。元々の電子メールの発信者は 受信者の(職場等の)電子メールアドレス宛に送信するのだが、 受信者個人が私的に指定したGmailのアドレスから「不達メール」が返却されてくる ことになる。受信者は発信者に予告することなくプライベートのGmailアドレスに 転送しているため、発信者の知らないGmailアドレスから通知が送られてくることになり 状況を理解し辛い。送信した電子メールが相手に届いていないのかと不安にもなる。 加えて、受信者が私的に設定しているGmailアドレスを 発信者に知られてしまうことにもなっている。
なお、このSPFフィールドの適正な指定には、電子メール送信者の メールサーバー側で設定する必要があるため、 受信者側で何らかの手を打てるわけではなさそうである。 加えてメールサーバーの設定は管理者が行うことになるため、 送信者個人で何らかの対策を講じることができない場合も多いと思われる。
受信者の取れる一つの方策としては、受信拒否に遭った発信者の電子メールアドレスを その都度「迷惑メールにしない」という指定をしてGmailのフィルターに 登録し続けることであるが、前述のようにGmail利用者には どの電子メールアドレスが受信拒否に遭ったかを知る手立てがないので、 送信者からの申し出が有った場合に限られ、即時性は期待できない。 もしくは、職場に届いた電子メールとGmailで受信できたもとのと差分を取ることで 把握することも可能ではあるが、両者を日々比較するのは労力が大きく 率先して行いたい作業とも思えない。
加えて厄介に感じていることとして、同じ電子メールサーバーからの電子メールでも、 時刻に依っては受信拒否されているものがあるように思われ、 再現性に欠けるように感じている。 Googleが設定に少しずつ手を加えているのかもしれない。
ここからは雑感であり、私の誤解も入っていると思われるが、 SPFフィールドが不完全であり、ルールに則らない電子メールが 多数流通している段階で、厳格なルールを適用しようとすると、 受け取れなくなる電子メールが一定程度発生することは自明であろう。 Google社がなりすましメールの根絶に乗り出したことは評価するが、 このような困った状況を各地で引き起こしていることを考えると、 現状に即した導入も有り得たのではないか。 このようなルールに則らないサーバーの根絶を狙って導入したものなのか Google の真意は判らない。ただ、困惑しているユーザーが相当数出現しているのは 事実であろう。
【これまで】
発信元 ==> 職場 ==> Gmail_1
【これから】
発信元 ==> 職場 ==> Outlook(旧Hotmail) ==[転送(3手法)]==> Gmail_1
==> Gmail_2 (現状の確認用)
これまでは、職場に届いた電子メールを直接Gmailに転送していたが、 これでは受信拒否に遭遇することが判ったので、 間に一つ別の電子メールサーバーを仲介させることを考えた。 この介在させるメールサーバーはGmail以外であれば何でも良いのだが、 たまたま過去にHotmai(現Outlook)のフリーメールアドレスを確保していたので、 これを活用することにした。 また、現状を再現し続けるために、確認用に新たにGmail_2を準備し、 そこにも転送しておく。
このようなルーティングを構成することにより、Outlookに届いているものと、 Gmail_2に届いたものとの差分を取ることによって、 受信拒否に遭った電子メールを把握することが可能となる (正確には職場のサーバーで受信したものとの差分でも可能である)。
このように設定した場合、前者の「リダイレクト」では、Gmail_1側に届いた 発信者のメールアドレスの横に「経由」と表示され、 また、後者の「転送」ではSubjectの先頭に「FW:」との文字列が追加され、 加えてGmail_1で受け取った電子メールの発信者がHotmailになっている。 見た目では前者の方が好ましいと思えるのだが、 「不達メール」になった場合のことを考えると、 後者であれば不達メールがHotmailに通知され、 元の発信者には返っていかないのではないかと期待している。
と、ここまでの設定で運用していたところ、「ルールに基づいた転送」においても
勝手に解除される事態に見舞われた。具体的にはルールを有効/無効にする
スライドスイッチが勝手に無効側に戻されていた。
「(単純な)一括転送」を用いた時にも感じたが、利用者が陽に指定しているものを
システム側で何のワーニングも表示せずに勝手に解除することは理解に苦しむのだが、
現状でそのような動作をすることも事実なので、
これに対しても何らかの対策を立てる必要がある。
調べてみると、ログインを2段階認証にするとこのような現象は起きなくなると
説明したWeb ページがあったので、モノは試しと2段階認証を導入し、
現在様子を見ているところである。
ちなみに、2段階認証にすると「(単純な)一括転送」も安定するかと期待したが、
残念ながらこれは早々に & 勝手に解除されてしまった。
何れにしても、3つのうちの1つでも期待通りの動作を実現してくれれば ありがたいと考えている。しかし、Outlook(旧Hotmail)が依然として 不安定な動作をするのであれば、Outlook を諦めて、 他のフリーメールを介在させることに変更することを検討する方が 近道なのかもしれない。 ちなみに、AOL は現在もサービスを続けているものの、 AOL 自身には転送機能が実装されていないようであるが、 Gmail 側から POP で読み出すことで転送を実現できるようである。
【これまで】
発信元 ==> 職場 ==> Gmail_1
【これから】
発信元 ==> 職場 ==> AOL <--<Gmailify>-- Gmail_1
==> Gmail_2 (現状の確認用)
これまでは、職場に届いた電子メールを直接Gmailに転送していたが、 これでは受信拒否に遭遇することが判ったので、 間に一つ別の電子メールサーバーを仲介させることを考えた。 この介在させるメールサーバーはGmail以外であれば何でも良いのだが、 今回この目的のためにAOL のメールアドレスを取得し、ここに据えた。 また、現状を再現し続けるために、確認用に新たにGmail_2を準備し、 そこにも転送しておく。
このようなルーティングを構成することにより、AOLに届いているものと、
Gmail_2に届いたものとの差分を取ることによって、
受信拒否に遭った電子メールを把握することが可能となる
(正確には職場のサーバーで受信したものとの差分でも可能である)。
なお、この前提として、AOL は送信されてきた電子メールを
全て受信出来ると仮定している。AOL の受信フォルダーに注視することで
この判断ができるであろう。
当初、AOL からPOP3 を用いて電子メールを取り込む方法を試みたが、 AOL側からエラーが返され何故かうまく設定できなかったために、 次の一手として Gmailify を利用することにした。設定自身は簡単であり、 主には AOL のメールアドレス(ユーザーID)とパスワードを指定するだけであるが、 具体的には以下のサイトを参照されたい。
このGmailify でハンドリングできるフリーメールアドレスとしてはAOL以外に、 Outlookも含まれているので、AOLでの利用が安定していることが確認できた暁には、 Hotmail(現Outlook)に切り替えて試すことも考えている (前項のこともあり、現時点で Outlook に対する信頼性に疑問を感じているが)。 不思議なことにGmailify のことを記述したWeb サイトは余り多くないように感じるのは 何か原因があるのであろうか。
一日弱経過した段階で、うまく機能しているように思われる。
正確なタイミングは判らないが、定期的に AOL 側を読みに行っているようで、
ほとんど遅延なくGmail 側に反映される。
一応これで目的の環境が手に入れられていると言えるであろう。
今後、もう少し様子を見る必要はあるが、しばらく運用してみて、
安定しているようなら、AOL に代えて Outlook(旧Hotmail)のアドレスを指定して
同様のことが実現できるか試してみる予定である。
【これまで】
発信元 ==> 職場 ==> Gmail_1
【これから】
発信元 ==> 職場 ==> Hotmail <--<Gmailify>-- Gmail_1
2週間程度運用した感触として、これまで職場に届いた電子メールは Gmail_1にもほぼ同時に届けられていたが、 今回の変更で、やや到着までに時間を要する(最長で5分程度か?)ようになった。 しかし、確実に届けられており、不達トラブルも発生しておらず、 主目的であるGmail_1に到着電子メールを集約することが実現できている。 そもそもGmailに集約するのは将来の検索のためであるので、 多少の到着遅れは問題にならない。
今回の試行から解ったことは、終端のアドレスをGmailにすることを止めて、 代わりにOutlook(やAOL)に変更し、そこからの読み出しをGmailifyに任せれば 回避できるようだということである。
なお、ここまで言及してこなかったが、実は、学会等のメーリングリスト(ML)に 登録している電子メールアドレスは、職場のものではなく、これを目的として確保した Gmailアドレスである(上図ではGmail_MLと表記)。 このように分離して運用している理由は、職場のメールアドレスが変更になった際に、 個々のMLの登録をそれぞれ変更する手間を省くためである。この方法を用いれば、 Gmail_MLに設定している転送電子メールアドレスを修正するだけで 全てのMLが新しいアドレスに配信されるように修正できて好都合だからである。
また、今回の一連の作業の過程で判明したことだが、従来のGmail_1を終端とする ルーティングを行っていた場合、MLに不達メールが返される際に Gmail_MLにもその痕跡が残っていた(当初見落としていた)。 そこで過去に遡って調べてみたところ、 私の場合、最初に不達メールが発生したのは4月14日9:00であり、 その後、15件/月程度の頻度で発生していた。 終端をOutlook(やAOL)に変更してからは、不達トラブルは発生していない。
この方策が今後もうまく機能するかは誰にも判らないであろう。 Gmailify というGoogleの機能を利用させてもらっていることから、 再度Googleが何らかの改定を実施した場合に影響を受ける可能性は 依然として孕んだままである。その意味で不確定性は残ってはいるが、 便利に利用させてもらえる間は、ご厚意に甘えて活用していこうと考えている。
今回は職場の電子メールの転送に関する不具合であり、実害が大きかったため、 積極的に策を講じようと腐心したが、 これ以外にも幾つか転送機能を用いて実現している電子メール環境があり、 それらでも同様の不具合が生じている可能性がある。 それぞれを一つずつ確認する必要があるものの、 この種の電子メール環境の構築の際に直面する課題として、 多くは発信者からの電子メールを受けての対応を検討するものであり、 自らがサンプルメールを発して試すことが難しいため、 その探求には相当に時間と労力を要する。 勢い実害が発覚するまでは放置するしかないように思われる。
今回の方策が以前の環境を取り戻す一助となることを願っている。