論理的記述力科研

22-01: 文献紹介 (04/22/22)

  1. 文献紹介 (その1)

    1. 21年10月の 本研究会 で既に児玉先生が以下3つの資料に基づいて、 「意見文・小論文」指導の観点からご紹介くださっている。
      • レジュメ 第3節
      • 資料6-1: P30-43 (第2章 第1節)
      • 資料6-2: P44-57 (第2章 第2節)

      • 今回は「論理的思考」、「論理的文書作成」の獲得方策・方法の観点で検討してみる。言うまでもないが、林が誤読している可能性がある。

    2. 「文は人なり」
      • 「文章の内容は普遍的であるが、文体については書いた人間そのものだ」 (P14)
      • 「文章は、それを書いた人の本当の姿を表す。だから、文を見ただけで、それを書いたのがどんな人かわかる」 (P14)

    3. 「文は人なり」への疑問
      1. 文章だけでその人がわかるわけではない
      2. 文章を書く楽しみを奪う <=== 文章を人生の結果の表れであるかのようにみなされると

      • 「ありのままに書く」ことは不可能 (P19)
      • 「自分の言葉で書く」ことは楽しみを奪う (P22)

    4. 「文は自己演出なり」 (P24) <=== 「文は人なり」からの脱皮
      • ありのままの自分を示すものでも、人生の結果を示すものでもない
      • 文章を書くことの楽しみを知ってほしい
      • その行為の先に未知の自分を発見できる、鍛錬できる (P27)

    5. 小論文は意見文 (P30)
      • 小論文には「文章力」は必要ない (P33) ==> 型が存在する
        • 文章力: 表現に凝る、しゃれた言い回し、比喩、生き生きとした描写
      • 仏、ディセルタシオン: Yes/Noで答える文章
      • 型: 4部構成 = 「問題提起」、「意見提示」、「展開」、「結論」 (P47-)
      • これに基づいて作成すれば、小論文は恐れるに足らない 【無駄無い心配はするな】

    6. 次の一手
      • メモを取る: 思い付くままに。課題の定義、何が起こっているか、...。部品集め。
      • 課題文の読み取りは(まずは)Noを考える (P82) 【天邪鬼】
      • 「賛成 or 反対」の意思表明とその理由付けを考える (P96)

    7. 他の文章作成場面では
      • 自己推薦書・志望理由書 (第3章、P106-)
      • 作文・エッセイ (第4章、P136-)
      • 手紙・eメール (第5章、P176-)

    8. 第6章 文章は現代を救う (P206-)
      • 書く力こそが思索力
        • 書くことの意味: 国語力、そして論理力、分析力や教養を安なうこと、つまり、知的になること
        • 国語力こそが論理力を養う
        • 考えるということは、母語を上手に使うということにほかならない
        • 国語力がつくと、思索力がつく
          【言ってることは解かるが、飛躍がありはしないか? そもそも国語力って?】

      • そのために行う方策
        • 良書を読むこと
        • 文章を書くこと = 実際に手を動かせ。楽しみながら
        • 自分のアイデンティティを拡大すること: 実体験を通して
        • 文章を書くという自己表現の手段を体得すべき

      • 将来に向けての提言
        • 「ゆとり教育」に作文教育を導入することを提唱したい
          • 個性の尊重と抑圧のハザマで
        • 初等中等教育に文章教育の導入を求める
          • 入試制度の変革にも言及: 「一つの正解」を求めない入試 = 文章教育とのこと

    9. 【感想】
      • 肩の力を抜いて気軽に作文する習慣を着けよう
      • 「書くこと」「考えること」の重要性
      • 模範(「型」)を知ること

      • 自己演出 = 自己誇張、虚像を誘発してる? その技を体得する必要も認めるが。
      • 「ゆとり教育」に過度の期待を持たれていたのか?
      • 最後(第6章)は少し飛躍があるようにも感じるが

  2. 文献紹介 (その2)

    1. 二項対立
      • 物事を捉える・議論する際の考え方
      • 問題発見に繋がる
      • (実社会においてはそれほど単純ではない。二項対立では捉えきれない (P70))

      • 【チェックリストと考えれば自然では? 特定の「事象」の有無、二値判断】

    2. 第3章 「型」を用いて知的に話す (P74-)
      • 考えを口にする 【行動を起こす】
      • 「メモの型」: 3What 3W 1H (P77)
          What=定義、現象、結果、
          Why=なぜ、When=いつから、Where=どこで、How=どうやれば(対策)

      • 「論述の型」 (P88) 【小論文作成技術の援用?】
        • <第1部 主張表明>
        • <第2部 意見提示>
        • <第3部 根拠>
        • <第4部 結論>

      • 5つの注意点 (P91): 【一種姑息なようにも感じる】
        • 「確かに」を上手に使う
        • 「確かに」のあとは、説得力のありすぎることを言わない
        • 話をずれなくするために
        • <第3部 根拠>ではできるだけ掘り下げて知性を見せる
        • <第4部 結論>では中途半端な妥協はしない

      • より個性的に見せるための高等戦術 (P100) : 【奇をてらった方策】
        • <第1部 主張表明>で暴言を吐く
        • <第2部 意見提示>は決まり文句で懐の深さを示す
        • <第3部 根拠>で深く切り込む

    3. 第4章 「型」を用いて他者の意見を知的に理解する (P115-)
      • 他者を理解することの大事さ
      • 質問によって知性をアピールする (P122)

      • だまされやすい6つの論理トリック (P137)

    4. 第5章 「型」を用いて知的に反論する (P149-)
      • 反論の必要性: まずは反論するつもりで考える
      • 「反論の型」の存在: 「メモの型」の援用

      • 禁じ手で相手を言い負かす法 (P166) 【時には必要なことも解るが】
        • 自分のほうが事情通であることをわからせる
        • 自分の考えが甘いことをわからせる
        • 先に逃げ道を封じておく 【かつての自分】
        • 相手の言えない部分を利用する

    5. 第6章 背伸びをして知識を自分のものにする (P177-)
      • 知識を増やすためには
        • 「知識」の重要性: 知識がなければ、しっかりした思考はできない (P178)
        • 読書のススメ
      • 方策: 受け売り、蘊蓄、引用、転用の勧め、かぶれる、背伸び

      • これからの鍛錬方法 (P187)
        • 議論相手を見つけること: 切磋琢磨
        • 文章を書くこと 【人に読まれない文書の作成を啓蒙することは? 添削が重要では?】

    6. 結びにかえて (P191-)
      • 「ゆとり教育」の罪 (P193)
        • 従来: 詰め込み教育がなされ、思考力や総合力が軽視されてきた
        • ゆとり教育に抱く夢: 思考力を高め、詰め込みでない教育が行われる

      • 自主性を持たせるには
        • まずは押し付ける必要がある (P196) 【矛盾してない?】
        • 白黒を付けない社会構造: 曖昧では論点がぼやけて思考力が育たない 【意訳】
        • 目立ちたがることを排除する雰囲気に負けるな

      • 小論文とディベートを授業に (P197)
      • 学校の役割: 自分で考えるための基礎力を付けること
      • 小論文を入試科目に: 飛躍的に日本人の思考力はアップするだろう 【ホントにそう思ってる?】

  3. 【2冊を読み終えて】

  4. 林の考える思考力の獲得方策: 2冊を読み終えて & 日頃考えていること
    1. 考えること、考え続けること
    2. より思考力の高い人(魅力的な人・賢者)と議論すること=聞くこと、読むこと
    3. 書くこと、話すこと
    4. 観察力、好奇心


  5. 【蛇足の情報】
    1. 大学における日本語リテラシー教育の紹介、なのかなと期待
      • 東北大学 教育関係共同利用拠点提供プログラム 学習指導論 S-01
      • 学士課程教育における日本語リテラシーを考える
        【日時】2022年4月23日(土)14:00〜16:00
        【講師】滝浦 真人(放送大学 教授)
      • https://www.ihe.tohoku.ac.jp/CPD/events/pd220423/
      • 既に受付は終了してしまっている(20日に)

    2. この8年間の大学入試改革の記録: 今更知ってもと言う方には不要
      ===== [引用開始] ===== o ===== o ===== o ===== o ===== o ===== o =====
        タイトルからも想像できる通り、今回の高大接続改革の混乱ぶりを書いた本で、
      福島で学習塾を経営されている方が執筆された本です。あまり期待せずに
      読んだのですが、今回の高大接続改革に関する議事録等を丹念に調べておられ、
      混乱状況を良く観察されまとめてくださっていると感じました。
      共通試験に機能を満載することが>如何に危険なことなのかや、
      教養部解体と共に作題能力が激減したこともちゃんと把握されていて。
      一方で、受験産業は粛々と解法を編み出されているわけですから、
      太刀打ちできないのも当たり前かと、変に納得したりもしました。
      
      # その意味では、今年の数学IAは一石を投じたことにならないかなぁ。
      
        他にも文科省が大学に対して過干渉なところとか、最後のところは少し
      哲学的ではありましたが、家庭教育の重要性を訴えておられたりで、
      (本書では取り上げられていませんが)DNC側の委員会等に参加していた者として
      振り返る良い材料となりました。
      
        で、実は、我々が2007年にまとめた以下の論文コピーを、書籍を紹介される以前に
      川嶋先生から依頼があり、何で今頃? と思っていたのですが、この書籍に
      引用(P86)があったからだったようです。出てきてびっくりしました。
      
      >> 林 篤裕, 伊藤 圭, 田栗 正章(2008),
      >> 「大学で実施されている入試研究の実態調査」,
      >> 『大学入試研究ジャーナル』、第18号、PP147-153.
      
        紹介内容は入試研究を行っている大学は少ないということを説明する部分で
      サラッと出てきただけですけどね。御存知の通り、以下の倉本先生の書籍に
      再録されていますので、どちらを読まれたのかは判らないのですが
      (正確な引用情報が掲載されていない)。
      
      >> 林 篤裕, 伊藤 圭, 田栗 正章(2020),
      >> 第6章 大学で実施されている入試研究の実態調査,
      >> 「大学入試学」の誕生(倉元 直樹編), 金子書房, PP78-89.
      
        今回の改革を審議していた一連の会議の出席者に送って(特に安西さん)、
      感想を聞きたいところです。岡本和夫先生はご自身の名前が出てきているのを
      ご存知なのかなぁとも(悪者扱いはされてません、念の為)。
      ===== [引用終了] ===== o ===== o ===== o ===== o ===== o ===== o =====
      
    3. アドミッションに携わる教職員への参考書(になれば良いな)

  6. 次回は?

  7. 次回日程候補 : 2022年5月? 6月? 何曜日が? 時間帯は? ===> 相談の結果、次回は「 5月20日、6月3日、10日、17日、24日」(何れも金曜日)の中の何れかの1日とする。 時刻は15:00-17:00(JST)。なお、7月に関して金曜日午後は避ける。

    【参考】2022年カレンダー

             5月                    6月        
    日 月 火 水 木 金 土   日 月 火 水 木 金 土
     1  2  3  4  5  6  7             1  2  3  4
     8  9 10 11 12 13 14    5  6  7  8  9 10 11
    15 16 17 18 19 20 21   12 13 14 15 16 17 18
    22 23 24 25 26 27 28   19 20 21 22 23 24 25
    29 30 31               26 27 28 29 30
    

  8. 予算関係 (追記)


[終了後追記]
  1. 石黒圭研究室
     本棚

  2. 現代思想入門 (講談社現代新書)
    千葉 雅也 (著)
    講談社 (2022/3/16)
    ISBN-10: 4065274850
    ISBN-13: 978-4065274859
    https://www.amazon.co.jp/dp/4065274850/

  3. ヘーゲル・大人のなりかた (NHKブックス)
    西 研 (著)
    NHK出版 (1995/1/1)
    ISBN-10: 4140017252
    ISBN-13: 978-4140017258
    https://www.amazon.co.jp/dp/4140017252/

  4. 超解読! はじめてのヘーゲル『法の哲学』 (講談社現代新書)
    竹田 青嗣 (著), 西 研 (著)
    講談社 (2020/12/16)
    ISBN-10: 4065221412
    ISBN-13: 978-4065221419
    https://www.amazon.co.jp/dp/4065221412/

  5. 西研: Wikipedia

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